薬事日報(7月30日号)の記事です!
薬剤師が受付業務を習得‐どの業務もこなせる存在に
船越南どんぐり薬局(広島市)の薬剤師は、事務員が多忙、不在の時間帯でも、処方箋受付や処方入力まで全ての業務をこなすことができる。約3年前にレセ プトコンピュータと電子薬歴が完全に一体になったシステムを導入し、この体制を実現。理想の薬局像に近づくための第一歩となった。
同薬局は2003年7月、耳鼻科診療所の移転開業に伴いその近隣に開局した。医薬品卸でMSを担当していた郷田克也氏が脱サラし立ち上げたゴーダカンパニーが開設した1店舗目の薬局だ。06年5月には広島市内に「西広島どんぐり薬局」を開設。現在2薬局を運営している。
耳鼻科処方箋が中心の船越南どんぐり薬局には、保護者が付き添った小児患者が多数来局する。
安芸区役所に隣接する立地から基幹病院の処方箋も集まり、リピート率は高い。近年は心療内科診療所からの処方箋が増加。高齢者向け施設における薬剤師の訪問指導も開始した。
薬局から半径500mの住民のかかりつけ薬局を目指し、患者サービスの充実を強く意識している。待合室は広く、投薬窓口はゆったりとしたつくり。腰掛け を備えた、曲線状の間仕切りが患者の背後まで覆い、話しやすい雰囲気だ。投薬窓口に隣接する相談コーナーは個室になり、市民の授乳スペースとしても活用さ れる。小学生の薬局見学も受け入れており、同社は昨年11月、広島市から子育てに優しい事業所の一つとして表彰を受けた。
電子薬歴画面で処方入力
レセコンと電子薬歴が完全に一体になったシステムを約3年前に導入したのも、患者サービスの充実を意識してのことだ。コスモシステムズが販売するレセコ ン「ぶんぎょうめいと」、電子薬歴「Pomer」を搭載したコンピュータ端末を受付に2台、投薬窓口に2台、相談コーナーに1台、調剤室に1台配置してい る。これは同薬局のスタッフ数(薬剤師4人、事務員2人)と同数だ。
薬剤師は処方箋受付から会計まで薬局の全ての業務を習得し、実践する必要があると郷田氏は考えている。郷田氏自ら薬局で事務作業を担当する機会があり、 受付に座っていると患者からよく薬について質問を受ける。「その時に『薬剤師を呼んでくるから待って』と応じているが、どこで誰に聞いても分かるのが本来 のサービス。その場に薬剤師がいればすぐに対応できる。受付も何をするのも薬剤師というのが薬局のあるべき姿だと思う」と話す。また、処方箋受付時の確認 事項が増えており、その意味でも薬剤師が受付から関わる必要性は大きいという。
その実現に向けて郷田氏は、レセコン操作に不慣れで多忙な薬剤師でも、煩雑な操作を必要とせず容易に扱えるシステムを求めた。その結果、電子薬歴を開くだけでその画面から直接、処方内容の入力や修正、削除を行えるなど、使い勝手の良い現システムの導入に踏み切った。
同薬局管理薬剤師の戸口拓士氏は「紙薬歴の時はレセコンに触れる機会はなかった。電子薬歴とレセコンが一体になったシステムが導入され、日常業務を通じ て処方入力作業も行えるようになった。疑義照会し処方変更があった時にも、その場ですぐ自分で変更できるため、業務は効率的になり、患者さんを待たせずに 済む」と評価する。
過去の処方歴や薬歴を参照しやすい画面構成もこのシステムの特徴だ。一つの画面の中で今回や過去の処方、過去の指導内容を参照しながら服薬指導を行える。医療機関ごと、診療科ごと、医師ごとに患者の過去処方や過去薬歴を瞬時に絞り込める機能もある。
また、症状や病状によって患者名の背景を色分け表示できる。同薬局は、緑内障・前立腺肥大患者は青色、要注意患者は赤色などの表示にしている。
赤色表示の多くは熱性けいれんの既往歴のある患者で、抗ヒスタミン薬の投与を避ける。「この目印によって画面を開ける前から要注意だと分かる」と戸口氏は語る。
このほか戸口氏は、▽薬品名の色分け表示や前回・初回処方日のガイダンス表示によって、処方薬の服薬歴が瞬時に分かる▽電子薬歴を参照して電話相談にす ぐに対応できる▽相互作用など様々なチェックを行えるため見落としが減少する▽定型文を活用し薬歴記載を省力化できる――などのメリットを挙げる。